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コモチシダの赤ちゃん

2月11日、長池公園の外周バス通り沿いの林縁では、暖地性のシダ植物が多く見られます。

都内では珍しいアマクサシダのほか、ハシゴシダ、タチシノブ、マルバベニシダなどです。

中でもひときわ目立つ存在は、長池小学校入口バス停付近に大きな葉を広げているこちら。

コモチシダという種類です。この辺りに近縁のシダは分布しないため、見分けは容易です。

アップで見てみると、葉にミシンで縫ったような規則正しい模様が入っています。これらは

胞子嚢(胞子を含む袋)の集まりである胞子嚢群(ソーラス)が葉の表面に浮き出たものです。

ミシン目のような胞子嚢群だけでもかなり異質な感じですが、コモチシダの最大の特徴は

名前の由来にもなっている「無性芽」を付けることです。無性芽は、葉の一部から分化して

こぼれ落ち、うまく定着するとそこから新しい個体(親個体のクローン)が生まれる代物。

シダ植物は通常、交配によって作られる胞子で増えますが、有性生殖を介さないこのような

増え方は栄養繁殖と呼ばれています。栄養繁殖をするシダは、ほかにもヒメイワトラノオ、

クモノスシダ、フジシダ、ホソバイヌワラビ、ツルデンダなど、複数が知られています。

コモチシダは、胞子による有性生殖と無性芽による栄養繁殖の両方によって増えるという

ことになりますが、なぜか長池公園ではこの大きな個体以外には全く見られず、単独で

生育しています。写真のとおり胞子も無性芽もたくさん付けているので、生育不良には

見えませんから、生育に適した環境なのだとは思いますが、不思議で仕方ありません。

幼個体を気付かずに草刈りしてしまっている可能性は否定できませんが、今度、これらの

無性芽を鉢植えにして、うまく芽生えて育つかどうか試してみても面白いかもしれません。

話を戻すと、そこからさらに長池公園西バス停方面へしばらく進んだあたりの林縁部に

ナリヒラヒイラギナンテンが顔を出していました。以前もご紹介したとおり、各地に植栽

されるようになり、それらが小鳥によって運ばれたとみられる逸出個体が増えています。

長池公園ではこれが初確認。まさに予想通りです。野生化するナリヒラヒイラギナンテン

外周緑地も歩いてみると面白い発見があります。たまには、園内に入らない散策はいかが?


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