11月8日、特別保全ゾーン内にあるハンノキ林とコナラ林で植生調査が行われました。
東京都委託のモニタリングで、2007年以降、じつに17年ぶりの本格的な調査となります。
その間、大きくなりすぎたハンノキを伐採更新したり、長池のかいぼりを実施したりと
様々な環境改善作業を行ってきましたが、コロナ禍やナラ枯れの蔓延の影響を受けて
しばらく思うように手入れができなかった時期もあり、良悪様々な変化がありました。
植物に詳しい調査員の方と湿地を藪漕ぎしながら、種類や生育状況を記録していきます。
花らしい花はほとんど見られないこの季節、葉っぱや果実、枯れ痕などを見逃さないよう
気を付けて確認していくと、草本層(下層植生)だけで100種類以上が記録されました。
そんな中、足元でひと際輝いていたのはキチジョウソウの花です。2007年の調査時には
記録が無い種類の一つであり、近年、小鳥によって外から運ばれて定着したのでしょう。
同様に、近ごろ湿地で見られるようになったものに、鳥散布のカラタチバナや付着散布の
イヌアワなどがあります。人や生き物の行動が植生にも変化をもたらしているのですね。
水辺では色付いたメギの実が目立っていました。ハンノキ林の低木層はメギとイボタノキが
優占種となり、ヤブデマリ、ヤマグワ、ウワミズザクラなどがその中に点在しています。
秋らしい光景として、スズメウリの果実やヤマノイモのむかごについカメラを向けました。
ミヤマシラスゲ群落の中に、シロハラと思われる小鳥の羽が散乱していました。オオタカの
食痕に違いありません。北国から渡っきて早々に餌食となってしまうなんて不運ですね。
私自身も久しぶりにハンノキ林を歩いたのですが、植物相の豊かさに加えて、この湿地に
暮らす生き物の気配も垣間見ることができ、改めてその生物多様性的価値を実感しました。
おまけ。午前中は工学院大学の学生と一緒に市内西部の民有緑地へ調査に出かけました。
この緑地にはやや珍しい樹木のオオバキハダが点在していました。ピエロのような葉痕は
キハダと共通していますが、葉軸や小葉裏面の葉脈上に軟毛が生える点がポイントです。