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ヒカゲワラビとギフベニシダ

12月1日、先週の管理作業中に、東中野公園で珍しい2種類のシダ植物を発見しました。

一つ目は松が谷遊歩道側の石垣に着生していた大型のシダ、ヒカゲワラビ(南多摩CR)です。

これまで見逃していたというよりは、最近になって定着したものではないかと思われます。

近年、都心部や北多摩地域の人為環境下での出現が増えていると噂に聞いていましたが、

南多摩ではまだ稀な種類で、八王子市内でも数えるほどしか自生は確認されていません。

由木地区内ではこれが2ヶ所目の発見となりますが、最初に見つかった樹林下の生育地は

ここ数年、発生が確認できなくなっています。今後、ひょっとしたら他の地域と同様に

新しい産地が増える可能性もあり、その動向に注目したい一種です。同じような見た目を

したミドリヒメワラビ(普通種)とは、葉裏の胞子嚢群の形の違いを見れば一目瞭然です。

もう一つはかなりマニアックなシダ植物。園路からすぐそばの地上に、1株だけポツンと

生育していました。これまで何度も通っているのに、その存在に気が付きませんでした。

ギフベニシダ(南多摩EN)という確認例の少ない種類です。近隣地域では、寺田町、犬目町、

鑓水、上柚木、多摩市和田などで発見しているほか、堀之内でも標本記録があります。

特徴に乏しく群生もしないため、他のベニシダ類に紛れて見逃されているかもしれません。

里山環境に依存する種類のようで、都内での分布は南多摩エリアにのみ、集中しています。

ベニシダ類唯一の4倍体有性生殖種であり、葉身の幅が狭く上のほうが細長く伸びる点と、

葉軸にやや幅のある明褐色の鱗片が疎らに付く点がポイントです。よほどシダに精通して

いないと何が何だかさっぱりわからないと思いますが、シダ眼を手に入れると、こうした

お宝発見の喜びを味わうことができます。私はギフベニシダを自分の目で見分けられる

ようになったことが大きな自信になった過去があるので、思い入れのあるシダの一つです。

何年も通い詰めたフィールドでも、まだまだ知られざるお宝が眠っているかもしれないと

思うとワクワクします。植物好きの方でも「地味だし難しい」と敬遠しがちなシダですが、

ひとたびその世界に入り込むと、本当に楽しいのです。シダ好きさん、この指とまれ~!


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