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湿生裸地の希少植物

11月6日、調査の仕事で市内西部の民有緑地へ出かけてきました。初夏に続いて2度目の

調査でしたが、今回は思いがけずとても重要な発見がありました。その一つがこちらです。

流れのそばの林縁から民地の庭先に至るまで、1000株以上のアイナエが群生していました。

アイナエは、東京都では絶滅危惧種に指定されているマチン科の希少植物です。ごく小さな

白い花はとても愛らしく、ファンの多い植物でもあります。貧栄養で、他の雑草がほとんど

茂ることのない湿生裸地に好んで生育します。八王子市内では数ヶ所の自生地が知られて

いますが、この場所は今まで見たどの生育地よりも見事な群落でその数に圧倒されました。

一般には立ち入りのできない私有地ですので、場所の詳細は非公開とさせていただきます。

東京都レッドデータブックに掲載されているアイナエの写真は私が由木地区内で撮影した

ものですが、撮影月は9月となっています。→アイナエ | 東京都レッドデータブック

もう11月ですので、まだ残り花がいくつもあったのは奇跡であり、花が咲いていたおかげで

気付くことができたので、この日、調査地をこの場所に選んで本当に良かったと思います。

アイナエの周囲に、物凄い数のイネ科植物がマット状に群生していました。よく見ると、

なんとこちらも大変希少な植物で、カリマタガヤでした。カリマタガヤを市内で見たのは

初めてです。一見そっくりで護頴に芒が無いことで区別されるヒメカリマタガヤのほうが、

市内ではやや一般的であり、前者は谷戸湿地、後者は稜線草地などに生育するようですが、

どちらも珍しいことに変わりありません。ここでは、カリマタガヤとヒメカリマタガヤが

同所的に生えており、実物を並べてその違いを比較することができました。それにしても

本当に写真映えしない地味な植物です。珍しい以上に気付く人が少ないのかもしれません。

解説を担当したので思い入れがあります。→カリマタガヤ | 東京都レッドデータブック

上の写真は上段3枚がカリマタガヤ、下段3枚がヒメカリマタガヤ。違いがわかりますか?

この日はもう1ヶ所、以前、ヒメカリマタガヤを見つけた緑地へ立ち寄ってみました。

予想通り、まだ健在でほっとしました。定期的な草刈りが必須な植物でありながら、時期と

タイミング次第では植物体そのものがダメージを受け、群落に影響の及ぶこともあります。

こちらの場所では、ヒメカリマタガヤと一緒にセンブリも元気良く咲いていてくれました。

その他の植物です。順に、ニコゲヌカキビ、ミズ、アキノウナギツカミ、フモトシケシダ、

イヌガンソク、クラマゴケ。秋の植物調査は、花よりも葉っぱや果実がメインですね。

秋らしいこんな甲虫にも出会いました。脚の関節から有毒な体液を出すことで知られる

ヒメツチハンミョウの雄です。どうやらこのままの姿で土の中に潜って越冬するようです。

市内とはいえ少し遠方での調査でしたが、たくさんの収穫があり、充実した一日でした。

おまけ。長池公園ではアオジを初認しました。藪の中で「チッ」と盛んに鳴いています。

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