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動物園のシダ雑記(投稿666件目)

10月31日、2日続けて都内へ出張となりました。この日は、長池公園で毎年行っている

自然環境保全実習の事前授業で、東中野にある専門学校東京テクニカルカレッジへ。

朝から夕方遅くまで講義だったので、昼休みは気晴らしに周辺の街歩きをしてきました。

普段は下ばかり見て歩く私ですが、ふと見上げると、空の美しさに心を奪われました。

青い空に、まるで踊っているかのような雲がいくつも浮かび、これぞ“秋の空”ですね。

東中野名物(←私だけ)の帰化植物、線路沿いのカベイラクサには花が咲いていました。

雑草オタクにとっては都内の街歩きもワクワクの連続です。道草の魅力をもっと広めたい!

ところで先週末、プライベートで多摩動物公園(日野市程久保)へ遊びに出かけたのですが、

園内には植生豊かな既存の雑木林がよく残っていて、つい植物に目がいってしまいました。

アフリカ園は雑木林と園路の間に石壁が連なっており、そこにいくつものシダ植物が自生

していることに気が付きました。マメヅタ、イヌケホシダ、コバノヒノキシダなどです。

さながら、シダ植物見本園のようなこの石壁を見ていくと、珍しい種類に出会いました。

1個体のみで、発見当初はヒメカナワラビだと思ったのですが、よくよく調べてみると、

①ソーラスが葉身および羽片上部から優先して付く、②主に外側の羽片を中心とする大半の

小羽片が独立せず羽軸に流れている、③葉柄が短い、などの点から、オオキヨズミシダの

可能性が高いことがわかりました。最新の「日野市高等植物目録(2024)」にはどちらの種も

記載がなく、webサイト上で2008年に南平で撮影されたヒメカナワラビの写真が紹介されて

いるのみであり、いずれにしても日野市ではごく希少な種類のようです。まさかの大発見!

機会を改めて、葉柄基部の鱗片なども詳しく調べてみたいです。(入園料を払って・・笑)

もう一つ嬉しかったのは、東京都の絶滅危惧種(VU)にも指定されているトキワトラノオが

100株以上、至るところに着生していたことです。近年、市街地などでも見る機会が増えて

きたように思いますが、これだけ多くの数が生育している場所はなかなかありません。

手元にある「多摩動物公園の植物(1967年刊行)」には載っていないので、この場所でも、

開園当初は見られず、後から胞子が飛んでくるなどして定着するようになったのでしょう。

こちらがその文献です。かなりレアな一冊ではないかと思いますが、開園当初の様子を

知ることのできる大変貴重な資料です。今では雑木林の林縁草地にたくさん自生している

クララが当時の記録には出てこない一方、地味な外見のオオアブラススキなどは当時から

ちゃんと認識されており、今も林縁に現存していることなど、様々な気付きがあります。

また、当時は、ミズオトギリ、アゼオトギリ、ノジトラノオ、ノウルシ、クサスゲなどが、

園内の湿地に自生していたという記述があります。現在の日野市内では見ることができなく

なった種類がほとんどです。当時の豊かさを想像しながら、また歩いてみたいものですね。

ちなみに、現在でも日野市では、「日野植物研究グループ」の皆さんを中心に、精力的に

植物相が調べられています。最近、その日頃の成果の集大成ともいうべき一冊の冊子が

刊行されました(写真1枚目)。私もささやかながら、ニガカシュウ、シラホシムグラ、

コゴメギク、チャボタイゲキ、メハジキなどの生育情報を提供させていただきました。

ほぼ半世紀前の1973年に、日野市を拠点に活動されていた播本正常氏によってまとめられた

冊子「日野の植物(1973)」(写真2枚目)が刊行されており、この間の植生の移り変わりから

市域の自然環境の変遷を読み解くことができます。記録は大事ですね。私は主に八王子市の

植物探求をライフワークとしてきましたが、お隣の日野市の活動から学ぶことは多く、

今後も引き続き交流を続けていけたらと願っています。三連休、南平のカワセミハウスで

企画展「日野の植物たち」を開催しているようですので、興味のある方はぜひどうぞ!



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